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治療法


治療の方法には内科的治療と外科的治療があります。
MGの一般的な治療の順序は次のようにするのが良いと考えられています。

<1> 抗コリンエステラーゼ剤による内科的治療法
<2> 胸腺摘出術による外科的治療法
<3> ステロイドによる対症・免疫抑制療法
<4> 免疫抑制剤の併用療法
<5> 血漿交換療法・血漿ろ過法・免疫吸着法など
緊急事態時の特殊な方法
<6> 漢方薬

胸腺摘出の時期は発病してから早い時期であるほど、術後の回復の成績はよくなっています。ですから、胸腺摘出術を原則として先行させる必要があります。




<1>抗コリンエステラーゼ剤による内科的治療法   >> 上へ
 
診断がついたら、まず第一に使われる薬です。「メスチノン」「マイテラーゼ」「ウブレチッド」などの錠剤があります。日常生活ができない時に薬を飲めば筋力が戻り、個人差はありますが、ある程度は普通に生活できるようになります。
 しかしこれは対症療法であって、病気の原因を直す薬ではありません。



 
抗コリンエステラーゼ剤の副作用について
 
 MGの対症的な治療薬である抗コリンエステラーゼ剤(メスチノン・マイテラーゼなど)の副作用としては、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、発汗、よだれ、流涙などがあります。「硫酸アトロピン」という薬がこの副作用を抑えるために使われます。
 また飲みすぎた場合には、筋肉がピクピクしたり、クリーゼを起こすことがあるので注意が必要です。
 「抗コリンエステラーゼ剤の大量(例えば6錠以上)の長期間使用により、薬の効果が弱くなってきたりすることもあります。アセチルコリン受容体が変性するという報告もありますので、このような場合は主治医とよく相談のうえ薬の工夫をしてもらう必要もあります。」。。。『MG友の会大阪支部ニュース』より




<2>胸腺摘出術による外科的治療法  >> 上へ



 
胸腺とMGの関係
 
 1930年頃に外国で、MGに胸腺腫が合併した患者の胸腺を手術して取り除いたところ、MGが良くなったということから、胸腺腫がなくても胸腺を手術して取れば、MGが良くなるのではないかと考えられて胸腺摘出術が始まりました。これ以後胸腺の働きが研究されて、胸腺とMGとの関係が次第に明らかになってきています。



 
拡大胸腺摘出術
 
 日本では1980年頃から、拡大胸腺摘出術が世界に先駆けて開始され、治療効果をあげてきました。これは医師の名により「正岡方式」とも言われています。
 以前の方法では胸腺の本体だけを摘出し、まわりの脂肪組織は残していました。正岡方式では、胸腺の脂肪組織にも胸腺細胞があることに着目し、広く胸腺を摘出します。その結果、以前より良くなる人の割合が増えてきました。

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傷跡があまり残らない手術もあります。詳しくはこちら。
城戸哲夫先生のHP(新しい胸視下手術の開発)




 
拡大胸腺摘出術の適応と効果
 
 「手術の適応は、15歳以上、全身型MGが対象となる。また手術の効果は、術後数ヶ月間の不安定期を経てから、半年から数年以内に『潮の流れが変わるように』徐々に快方に向かうことが多い。」
 胸腺腫がない場合の方が、術後の改善率が良いといわれています。 『現代難病事典』(東山書房)

 胸腺の摘出は、MGの基本的な治療とされています。しかし、(1)10歳以下あるいは70歳以上 (2)受容体抗体陰性 (3)眼筋型 (4)合併症がある場合などは、慎重な選択が必要とされています。
 しかし眼筋型でも有効という研究もあり、今後、治療の対象が広がることと思われます。



胸腺腫がある場合
 
胸腺腫がある場合は、なるべく早く拡大胸腺摘出術を受けることが勧められています。胸腺腫例では早急な摘出を行っても、MGの症状の改善は、必ずしも良くない場合もあり、胸腺摘出後一時的に症状の増悪を来たすことがあります。この際は、ステロイド療法等がさらに必要となります。『MG友の会大阪支部ニュース』より



胸腺摘出の問題点について
 
 胸腺は成人頃には脂肪組織に変わって、働きはなくなると考えられています。胸腺を取ってしまっても、風邪を引きやすくなるとか、癌が発生しやすいとか免疫機能が低下することはありません。



<3>ステロイド療法(内科的治療方法)  >> 上へ
 
 ステロイドは炎症を抑える作用があります。かゆみからガンに至るまで、数多くの難病の治療に用いられています。よく効く薬だけに副作用もあり、注意しながら使われます。
 ステロイドは、胸腺摘出後においても、なお全身型で抗コリンエステラーゼ剤の効果が不充分な重症例に使われます。また、胸腺摘出前からも使われる例もあるようですが、これはよほど重症の場合に限定されています。その他、眼筋型でも日常生活に強い障害がある場合は、有効性があります。



漸増・漸減療法
 
 (薬品名「プレドニン」「メドロール」などがある。)1日に1錠5mgから12錠60mgくらいまで徐々に増やす漸増療法と、反対に60mgくらいから徐々に減らす漸減の方法があります。この時、1日おきに(隔日)服用すると、副作用を少なくすることができます。
 最近では、もっと少ない量でも、同じ効果を得ることができるとわかってきたので、少ない量で治療します。
 1日に2,3錠(10mgから15mg)で、一日おきでも2,3ヶ月で効果が現れます。
 この治療でやっかいなことは、薬を減らしたり、止めたりすると症状が悪くなることがあるので、薬から離脱することが難しいことです。



ステロイドの副作用について
 
 「ステロイド系の薬の副作用としては、軽い場合、満月様顔貌(ムーンフェイス)、体重増加、にきび、不眠等が現れますが、薬を止めるほどではありません。さらに眼症状として緑内障、白内障。消化器系では、潰瘍、脂肪肝、すい炎。代謝系では、糖尿病、高脂血症。中枢神経系では、うつ病などが認められることがあります。また、骨粗しょう症や免疫力の低下を来たすこともあり、これらの症状が出現した場合、薬の服用を中止しなければなりません。 『MG友の会大阪支部ニュース』 より



パルス療法(ステロイドの大量療法)
 
 リンデロンなどを500mgか1000mgを、静脈に点滴で入れる療法です。2日か3日、あるいは5日間続けてから、1週間か10日休んで、また行います。それを1ヶ月に2,3回繰り返します。
 これは漸増・漸減療法の副作用を少なくし、またステロイドの離脱困難を避けるも汽笛で行われています。




<4>免疫抑制剤の併用療法   >> 上へ
 
 イムラン、アザチオプリン、エンドキサン、また、最近ではサイクロスポリンやプログラフなどが使われるようになってきました。これは胸腺摘出、ステロイドなどの治療をしても効果がない重症の場合に、他の薬と併用して使われます。



免疫抑制剤の副作用
 
 ステロイドと同様な目的で使用する免疫抑制剤には、骨髄抑制(白血球、赤血球、血小板などの減少)、腎毒性など重篤な副作用をきたすものもあります。いずれにしても主治医と相談のうえ、綿密な血液検査を重ねながら、薬を的確に服用することが大切だと考えます。




<5>血漿交換療法   >> 上へ
 
 抗コリンエステラーゼ剤を使い、胸腺摘出術を行い、ステロイド剤や免疫抑制剤を使った治療をしても、症状が良くならない重症な場合に、血漿交換療法や抗体の除去を目的とする特殊な二十膜血漿ろ過法・免疫吸着法などの血液浄化法が行われます。
 胸腺の摘出をしていなければ血液中の抗体を取り除いても、体は新しい抗体を作りますから、効果はすぐになくなります。これは根本的な治療法ではなく、重症な場合の緊急事態を乗り切るための特殊な方法です。




 

<6>漢方薬   >> 上へ
 
  「漢方薬は、局所的な直接作用は少なく、全身状態を整えたり、西洋薬の副作用の軽減や効果増強の作用があります。ただしその処方は患者さんにより異なりますので、必ず漢方専門医の診察を受けてください。また、その際は内服中の西洋薬も医師に伝えてください。重症筋無力症に対して特定の漢方薬があるわけではありません。」 『MG友の会大阪支部ニュース』より

漢方薬は健康保険が認められるようになってきています。また、数は非常に少ないのですが、「東洋医学科」が設置された病院もあります。「東洋医学研究所」も日本に数ヶ所あります。
 重症筋無力症に特定の漢方薬があるわけではありませんが、下痢、軟便になり易い方には五積散が一番広く一般的です。東洋医学科で診療している医師によると「プレドニンやマイテラーゼを減量することができた。抗体値が下がったり、症状が改善した。」という報告もあります。

 重症筋無力症の患者に有効とされている漢方薬は以下の通りです。
 ● 葛根湯 (風邪薬で、首や肩がこる時に使われる)
 ● 小青龍湯 (風邪薬 痰、鼻水が多い時に使われる)
 ● 半夏厚朴湯 (喉の詰まり、喘息で苦しい時に使われる)
 ● 補中益気湯 (元気をつける薬 手術後や放射線治療後に使われる)
 ● 五積散 (葛根湯・小青龍湯・半夏厚朴湯を合わせたもの)
 その他、にんじん・黄耆・補気薬の入った方剤・柴胡・釣藤・勺薬・陳皮・厚朴などがあります。 (兵庫県立尼崎病院東洋医学科 松本先生の講演より)




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