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予後について



国立静岡病院名誉院長
(財)康済会病院院長 宇尾野 公義 先生


今から30年前(1960年)頃では「当時はまだ重症筋無力症の本態は全く不明で、多くの患者さんがクリーゼを反復しながら徐々に悪化しました。薬もせいぜいワゴスチグミン程度…でした。そこで呼吸困難があると、医師と看護婦が協力して長時間、人の手による人工呼吸を繰り返し、結局不幸な結果に終わるケースが沢山ありました。
 その後、研究が進み抗コリンエステラーゼ剤の中でも効果が持続し副作用の少ないメスチノン、マイテラーゼ、ウブレチッドなどが次々に開発され、クリーゼの対応も進歩し、患者さんは長期慢性化してきました。続いて副腎皮質ステロイドホルモン、ACTH、胸線摘出術、胸線コバルト照射、さらに血漿交換と、この30年間に著しい進歩がみられ、神経難病のなかでは、MGの研究はめざましい発展をしました。
 従って患者さんの予後も著しく改善し、厚生省研究班の過去30年間にわたる追跡調査の結果、現在ではMGの生存率は、100%に達したのです。つまりMGそのものでは、もはや生命を縮めることにはならい、何らかの合併症か事故があった場合に寿命を縮めるということです。
 合併症がなければ薬を使いながら、あるいは胸線摘出術や血漿交換をやれば回復して天寿を全うできるということです。
 私自身も厚生省研究班の仕事を仰せつかった頃から、つまり都立府中・神経病院における12年間、さらにその後の国立静岡病院の7年間、重症筋無力症そのもので、例えばクリーゼなどによる死亡例は全く体験していません。…かつて受持医をあれだけ悩ませたクリーゼが最近ではほとんど見られなくなりました。…。 …しかも諦めていたのに何十年ぶりかで、ステロイドを試してみたら劇的に効果のでた人もあります。免疫機序のむづかしさがここにもみられます。どうぞ諦めずに主治医ともどもいろいろ研究しながら長丁場でつきあっていただきたいと思います。



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